7月

父が再入院をしたのが7月だった。雨の多い夏だったのを覚えている。

元気だった頃は毎週のように釣りへ行っていたが、その元気な頃の父と病院で過ごす父の顔がダブって見える。

元気だった頃なら毎週のように釣りへ出かける季節で、鮎を釣って帰ってくる父の表情は今ではとても懐かしい。

「あ~、元気だったら今頃父は鮎を焼いて食べていたな」そう思うと時間の過ぎるスピードもとても早く感じる。もう戻らない時間だけれど、いい思い出を残すことは沢山しておくべきなのかもしれない。

辛くて悲しくて仕方ない時もあるけれど、思い出を懐かしく感じ微笑むこともできるんだなぁ、なんてふと思った。



多くの人は、父の事を忘れていく。思い出したとしてもほんのたまにで、思い出にふけることも少なくなっていく。

でも、一番近い人は沢山ある思い出を引き出しの中にしまってあるようなもので、いつでも引き出して、いつでもその思い出に微笑むことができる。引き出しを引いて涙を流すこともあるかもしれない。それでも引き出しは沢山あるほうがいい。

悲しいだけ、と思っていても探せば笑顔を伴った想い出は必ずあるものだから。



私の'03 7の引き出しは父の入院と言う辛い中身だった。でもその前は嬉しそうに鮎を食べる父の顔が入っている。その前も、父は鮎つりへ元気に出かけた嬉しそうな父の背中が入っている。

今年も父の代わりに川へ行ってこよう。

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