お花が手に入り、早速お墓参りへ行ってきた。相変わらず、父が眠る場所とは認めがたい。

父ともよくお墓参りには来ていた。最後に行ったのは平成14年12月1日だった。お稲荷さんへ一緒に出かけその帰り道に寄ったのだが、今でもあの時の光景は覚えている。もちろん愛犬3匹も一緒だった。時々この時の事を思い出しながらお墓を掃除している。

お墓に着いて掃除をしていたら、下のほうから父にとてもよく似たタイプの人が花を片手にやってきた。白髪交じりで肩幅のがっちりした人で元気な頃の父を思い出させる。

しかし、それで終わらなかったのは2匹の愛犬だった。その人を見た途端、パタッと動きを止め、じっとその人を見ている。驚いているという感じだ。すると、さくらは尻尾を降り始め猛ダッシュでその人の所へ走って行ってしまった。ジュディーも「ワンワン」と吠えながらその人の下へ走っていく。

その男性は犬が好きだったようで「可愛いですね。それに始めてみる私にこれだけ喜んでくれるなんてなつっこい性格なんですね」と声をかけてきた。足元で必死にその人の匂いを嗅いでいたが、声が聞こえた途端動きが止まり尻尾は下がった。

「すいません。ここに父とよく来ていたのですが、多分父と間違えたのだと思います。今日はその父の元へ来たのですが、この子達にとってはまだ戻ってくる存在みたいです」

と言った。

「そうでしたか。私は犬が好きなので全然構いませんよ。しかしお父様は喜ばれますね。こんな可愛い子達が会いに来てくれるんですから」と言った。

花を変えながら父に「ジュディーやさくらに挨拶もなしに行ってしまうから、探してるじゃないの」と涙がこぼれそうになった。そんな私に気がついたジュディーは私を一生懸命になめた。

「ごめん。ジュディー。とーちゃんは戻ってこないからね。許してね」としか言えなかった。

ジュディーとさくらは今父が何気なく戻ってきても、いつもの明るさで出迎えるだろう。もちろん恭平が戻ってきても、きっと恭平のお尻を枕にお昼寝をするだろう。

父が最後に家を出てから今までの間、父は戻ってくると思っているからこそ、父と恭平を探さないのだろうか? そんな気がした。

父と一緒に入っていった父の部屋には、2匹は入って行かない。それは一緒に入っていく父がいないからだろうと思う。これもやはり2匹は父がいつか戻って来ると疑っていないということなのかもしれない。

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