母べぇ  2

この映画を見ていたら、祖母を思い出した。

祖母は、夫である私の祖父を35歳の時に亡くし子供5人を育ててきた。その時代に夫のいない女性が生きるには厳しい世の中だったという。当然子供達にもその世間の風当たりは厳しいらしく、父は
「後家の子と世間で言われないように、どこへ行っても恥ずかしくないように、しつけは恐ろしいほど厳しかった」とよく言っていた。祖母はそんなことは一言も口にしなかった。
もちろん、苦労したとか、大変だったとかそういう事も聞いたことがなかった。しかし、「こんなだらしないしつけをした覚えはない」と父を叱る場面を何度も見た事がある。
私にも厳しかったので、幼少の頃の祖母はどこか怖い所があり甘えられる祖母という存在ではなかったが、大人になるにつれ祖母のりりしさを受け入れることができていった気がする。

随分大人になってから知った事実がある。
私が子供のころから、当たり前のように仏壇に○○童子と書かれたお位牌があったがそれが父の兄のことだと父から聞かされた。
私の記憶にかすかに
「○○○(父)も可愛そうだった。本当は次男だったからなぁ」と祖母が言った記憶がある。
父は祖父が亡くなってから長男の代わりに兄弟を支え、頑張ってきた。学年で一、ニ位を争うほど頭が良く、生徒会長も経験し、国体にも出たほどだったがお金がなく兄弟の面倒を見るために高校へすら行けなかったという。
その父に対して、ふと漏らした言葉だったがこの映画を見て祖母のこの言葉の深さを今更ながらに知らされた気がする。

 

 

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