お風呂屋さん

私が行ったお風呂屋さんは父の生前に二人でよく出かけた。母はあまりお風呂で長湯が好きではないので、結局父と行くのだ。

出る時間を二人で決めて、父が先に出ると食事をして私を待っている。普段はウィスキーしか飲まない父がビールを飲み「お前も飲むか?」と聞く。全く飲めない私は一口もらい「後はお父さんが飲んで」とたわいもない会話をする。

そんなあの頃がなつかしい。

最期に一緒にお風呂屋さんへ行ったのがつい最近のようで、鮮明に思い出す父の顔はおだやかだ。

父が発病をした時、余命宣告を受けたのは私だった。泣く場所がなく、どうしても流れてくる涙を誤魔化すため、そのお風呂屋さんのシャワーを浴びながら泣いた。どれだけシャワーを浴びても涙が止まらなかった。2時間ほどはお風呂屋さんにいるので、2時間あれば涙も止まると思っていたのに、止まることはなかった。

あの時の自分もなつかしい。

辛い気持ちを抱えながらも懸命だった自分、辛い体調ながらも懸命に生きた父。そんな事を思うといつも頭に浮かんでくるのは「お父さんは本当に頑張った。だから自分も頑張れた」と言うことだけだ。

又、父の夢を見た。内容はほとんど記憶にないが、あのお風呂屋さんで見た父のおだやかな表情と同じ父だったのは印象的だった。一言「トロイな、お前は」と言われたのも記憶にある。

夢の中でも父はまだ私をトロイと思っているようで悲しくもあるが、しかしあの時と何も変わっていないと思えば、夢の中の父の言葉も微笑ましく思える。

正直言うと夢の中でいいから「お前はよく頑張ってくれた」ぐらい言ってもらいたいのだが、無理だろうなぁ。。。。。。私はどこかヌケているからなぁ。。。。。

それにしても最近はよく父の夢を見るなぁ。

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