病院にて

こけたのが一体何時だったか覚えがないが、2時には家にいた。病院の診察までは4時間ある。待つには長い時間だ。手当てが遅れたために傷跡が残ったなんて事にならないといいのだが。

6時になり病院でやっと診察。

診察室に入るとどうやら先生は女医さんだ。よかった、これなら私の気持ちを理解してしっかりと治療してくれるに違いない。

先生も私の顔を見るなり「あら~やっちゃったわね~」という。

私は「先生、お願いです。傷跡の残らないように治療してください。痛いのは我慢します」と半べそでお願い。

すると先生は「まあ、落ち着いて。ね。判ったから落ち着いて」という。4時間も待ったのでここにたどり着いた途端我慢していたものが一気に噴出した感じだったのだが、それが判ったのだろう。

「とにかく座って。バッグはここに置いて、ね。座りましょう」と又言う。

椅子を探したが座ろうとしたら又こけそうになった。それにしても診察する気があるのか、この先生は。一向に治療の用意をしようともしない。椅子に座ることもしないし、私の体を横に向けてしまう。結構失礼な先生だ。

焦って「先生、私大丈夫でしょうか?」と椅子を先生の方に向けながら言うと

先生は「大丈夫よ。そんなのかすり傷だから。ま、落ち着いて」と又落ち着くという言葉を使う。

その時「さ~て、どうしたかな?」と白衣のおじさんが横から出てきて言う。

「あ~、顔から転んだの? ま、大したことないよ」といい、私の座った椅子の前に座るのだが、あんた誰?

まさか・・・・私が先生と思っていた女性を見ると看護師の格好をしている。は?

ほんとだ、私は取り乱していたようだ。この上なく恥かしい。

先生は私が応急処置で流しきれなかったアスファルトの粉のようなものが残っていてそれを取り除き、消毒をしてくれた。消毒をしながら「明日は自分でやってね。出来るでしょ?」というではないか。

「は?どうしてですか?」と聞いた。先生は「出来ないならここに来てもいいけど、面倒でしょ?」という。は?今日だけで処置は終わりなの?

「でも、先生。傷跡が残ると困るのです。これでも大切な顔なんで」と言うと

「小学生なら、消毒だけで終わるよ。それぐらいの傷だから跡は残らず綺麗に直るんだから、そう、心配するなって、な」と言うが私は年食ってるど!!!!!

しかし、それでも重症と思っていた私は納得がいかない。「もう来なくてもいいって事でしょうか?」と確認すると

「大丈夫さ。あ、でもね、治っていく段階でかさぶたが出来るよ。みっともないわな~。でもかさぶたが取れたら綺麗になってるからね」との事。

他に怪我が無い事を確認し治療は終わり。

重症と思っていた私は実は軽症で、足取りも軽くなった。



待合室で清算を待っている間、患者さんがいなかったので又、先生が顔を出してくれた。

「いや~、転んだ時に顔で止まったんだね。顔で地面を受け止めたとも言うが。とにかく心配しなくて良いよ。大丈夫だからね」と言ってくれた。非常に優しい先生だ。

「顔から転ぶなんて、何してたの?」と聞かれた。「犬の散歩です」と言うと「これからは気をつけなさいね」と言ってくれた。この先生が大好きだ。来なくていいといわれても診察へ行くことにしよう。

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