欲と絶望

犬のおやつに豚耳っていうのがある。とても硬く私が噛み付いたら歯が欠けそうなほどだ。犬の顎の強さはこういう硬いものでもかじれるからすごい。

以前、恭平とジュディーに散歩の帰りにおやつを買った。いつも行くショップなので自分達のおやつと判り車の中でどうしても欲しいとねだる。仕方なくあげようと思ったがはさみがないと封が開けられない。にっちもさっちも行かず降参だ。いや、待てよ。2匹の歯ならなんとか開けられるかもしれない。「これを開けられたらあげるからね」と未開封のまま2匹の前に差し出してみた。恭平は「じゃ、家に帰ってからでいいよ」と言いはしないがすでに諦めている。所が頑張ったのはジュディーだ。ビニールを必死にかじりあっという間に封を開けた。欲はここまでの力を発揮するとも知った。

話は戻り、豚耳は2匹は好物で硬い所がいいらしい。あっという間に食べれるおやつでは物足りないし、カジカジするとストレスも発散できるらしい。

今日のことだが、2匹のおやつの時間に豚耳をあげた。さくらはあっという間にカジカジと食べてしまった。ジュディーはあまりおやつが欲しくなかったようで、豚耳を咥えたり自分の前に置いたりして豚耳を守っている。

いつものことだが、さくらの方が食べるのが早く自分が食べ終わるとジュディーの物を横取りするのだ。それを知っているジュディーは取られまいと自分の目の前に置くか、咥えて守りに徹する。

以前は庭に穴を掘って埋めたりしていたが、さくらはさっさと掘り当ててあっけなく奪われた。又、誰かが玄関に来たとき、吠えながら玄関へ走っていったがその時うっかり豚耳を落とした。それを見ていたさくらは豚耳を奪った。

又又ある時、私が冷蔵庫を開けたらジュディーが飛んできたのだが、その時うっかり豚耳を落とした。もちろんさくらは奪った。

そういう辛い経験から、ジュディーは吠える時は豚耳を咥えたまま吠えるという技も覚えたし、何があっても豚耳を落とさないようにする事も覚えた。何があろうとも自分の目の前に豚耳を置いておくのが一番安全なのだ。

そして1時間後、まだ咥えたり目の前に置いたりしてジュディーは頑張っている。さくらは付き合い切れない、という表情でさっさと昼寝。しかし、警戒して寝ているさくらをじーっと見ている。さくらがふと頭を上げると、さっと咥えて「これは私のものよ」と必死だ。

さくらも大して欲しくないようで、ジュディーの豚耳を横取りする気配はない。それでも豚耳警護を続けるジュディーがあほらしく見えてきた。

さらに1時間後、とうとう眠気に勝てず豚耳を咥えたままコクリコクリとし始めた。頑張って目を覚まそうとしているようだが・・・・

ついにジュディーは豚耳を目の前に置いてお昼寝を始めた。警護は結構疲れる。

と、その時さっきまで昼寝をしていたさくらが、パッと起き上がり、サッとジュディーの豚耳を奪い走って逃げた。寝ぼけたジュディーは目の前の豚耳を探している。

可愛そうなジュディー。。。。つい眠ってしまったばかりに何時間という豚耳警護は無意味なものとなった。

いや、一枚上手のさくらにジュディーが負けたのだ。



奪われないようにすればするほど奪われるものだってある。

あっけない結末に悔しい思いをする事だってある。

ずるがしこい娘に手を焼くこともある。

でもね、それが人生だよ、ジュディーちゃん。

きっと又奪われるだろうけど、こっそり豚耳をあげるからね。

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