”うちの子が一番”を疑う瞬間

近所にサブちゃんという柴犬がいる。前に話したかもしれないが、飼い主であるご主人が脳梗塞で入院される前は手のつけようがないやんちゃ坊主だったらしい。

所が、ご主人が退院されリハビリの成果が出て随分と歩けるようになった。そこでリハビリに散歩を追加したいが一人で歩くのは退屈なのでサブちゃんを連れていこうとした。が、家族はこのやんちゃなサブちゃんを連れて歩いたら転んだりして危ないと猛反対。しかし、ご主人はじっと見つめるサブちゃんを連れ出した。

すると、ご主人に歩調を合わせ、ご主人が止まると止まり、道ですれ違ったワンちゃんには目もくれずじっと横についている。見事にご主人のパートナーとなった。

ご主人もサブちゃんがいてくれたからここまで良くなった、ととても喜んで話された時、深い絆で結ばれた絆のオーラが出ているようだった。



うちのジュディーとさくらがサブちゃんに初めて会った時、怖いかったらしく近くにも寄らず、私に抱っこを迫る始末だった。

所が、何度も会っているうちにジュディーとさくらはサブちゃんを怖がなくなりじっとサブちゃんとご主人を見つめている。ご主人はいつも「この子達は可愛いね」と声をかけてくれ少し不自由そうに手を出してなぜようとまでしてくれる。所が、2匹はご主人に近寄らない。普通ならしっぽフリフリで可愛さをアピールするが、しっぽすら振らずじっとサブちゃんとご主人を見つめている。

どうやら、サブちゃんとご主人の深い絆を感じとっているようだ。いくら自分が愛嬌を振ったところでサブちゃんにはかなわないと思っているフシもある。



ある日、珍しくさくらがサブちゃんにそっと近づきサブちゃんの匂いを確認しようとした。その時サブちゃんは動じることなくじっとしていて、さくらはちらっとサブちゃんの顔を見上げた。「あなた、どうして動かないの? ほんとに犬なの? じゃ、もっと匂い嗅いでいい?」と確認をしているようだった。サブちゃんは誰に何をされてもご主人から離れず、その姿は勇敢でもある。

今日、サブちゃんとご主人に散歩の途中で出会った。少しご主人が疲れた様子で道の低いブロック塀に座っていた。サブちゃんはもちろんその横にじっと座っていた。

そして、いつものように「可愛いね」と声をかけてくれた。そして「元気だからいいね」といつも笑顔のご主人はさらに笑顔でつぶやいた。

サブちゃんとご主人と別れた後、そっと振り返るとご主人がサブちゃんに話しかけ、そのご主人の顔をサブちゃんが優しそうに見上げていた。

この1匹と1人にはかなわない。うちの子が一番と思っていたけれど「サブちゃんは最高のわんこだ」と感じた瞬間でもあった。



そういえば、ご主人が「この子は私の恩人だ」と言っていた。

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